第3章.0.1[%]の速度偏差の実験

3.1 0.1[%]の速度偏差とは?
 PCMプロセッサーのサンプリング周波数には、44.056kHzの製品と44.1kHzの製品の2種類が存在していることは、既に第1章にて説明しました。44.056kHzのPCMプロセッサーを使用し録音、再生を行う分には、この0.1[%]の速度偏差は発生しません。しかしながら、44.1kHzのPCMプロセッサーを使用し録音、再生を行った場合、0.1[%]再生時間が長くなり音程も0.1[%]低くなるという問題が発生します。
 これは、家庭用VTRを使用しているPCMプロセッサーでは避けることができない問題ですが、PCMプロセッサーのディジタルデータを一度PCに取り込み、PC等で再生することで解決できると言われております。
 この0.1%の速度偏差の問題については、すでにetoilesさんのHPで詳しく説明されていますので、これ以上の説明はここでは割愛します。

3.2 検証実験の方法
 上記やetoilesさんのHPで説明されているように、この問題はPCMプロセッサーのディジタルデータを一度PCに取り込むことで解決できます。しかし、本当に解決するかどうか?、検証実験を行ってみることにしました。
 検証実験の方法ですが、まず、1kHz近傍の周波数をPCで発生させPCMプロセッサーで録音、再生し周波数がどのよう変化するかを測定します。次にこの録音データをPCに取り込み、今度はPCで再生し同じように周波数を測定し、これらデータを比較してみることにします。
 1kHz近傍の周波数の生成には、efuさん作成のWaveGeneを使用し、録音する周波数はサンプリング周波数、44.1kHzで高調波スペクトラムの発生しない1.001293kHzとしました。

3.3 実験結果
 下記に実験結果を示します。まず、録音時の周波数です。
録音時
 理論値の1.001293kHzと0.009787[%]の周波数のづれがありますが、これはPC側での44.1kHzの発振周波数の誤差によるものと考えます。
 次に上記の信号をPCM-501ESで録音し、再生したときの周波数です。
PCM-501ESで再生
 値を見ればわかるようにちょうど、0.1[%]低い周波数になっていることがわかります。
 さて、最後にこの録音データをPCに取り込み、PCで再生したときの周波数です。
PCで再生
 録音時の周波数、1.001391kHzと0.008388[%]の周波数のづれがありますが、これもPC側での44.1kHzの発振周波数の誤差によるものと考えます。
 これらの実験結果から、0.1[%]の速度偏差の問題はPCに取り込むことで解決できることが検証できたと考えています。

3.4 考察
 上記、3.3項の実験は、速度偏差を測定することが目的であるため周波数カウンタにて測定しています。ただ、測定中の周波数には変動があり、上記、3.3項の値は変動のほぼ中心値です。
 私の目測になりますが、周波数の変動は概ね下記のような値でした。

動作モード 周波数 変動幅
録音時 1.001390~1.001393 0.000003
PCM-501ESで再生 1.000386~1.000396 0.000010
PCで再生 1.001474~1.001476 0.000002

 上記は目測の値でありあくまで参考ですが、PCに取り込むことで0.1[%]の速度偏差が改善されることのほかに、ジッタ性能の改善も期待できそうです。一般的にアナログのVTRはジッタが多く発生すると言われており、一部、家庭用のVTRにもTBC(タイムベースコレクタ)の内蔵された機種も販売されておりました。
 今回、音源のCD-R化を目的としていることから、本来ならばこのデータをCD-Rに書き込み、再生した場合の変動幅も測定するべきかもしれません。しかしながら、CD-Rへの書き込み、再生となると、使用するCD-Rのメディア、CD-Rの書き込みドライブ、再生するCDプレーヤーなどの数多くの要因が関係してきます。また、ジッタを正確に測定するためには、モジュレーションドメインアナライザ等の測定器が必要となることから、今回は割愛しました。


第4章.0.5fsのチャンネル間位相差の補正
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